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そう言うとイカルは懐から呼子を取り出し、少年の目の前にかざした。
「いいかい。このあと――たぶん明日になると思うが、必ず戦闘が起こる。そのとき頃合いを見て、わたしが合図を出す。すると、まず村の方でこの呼子が鳴る。その音がこの場所で聞こえたら、今度は君が湖の方に向かって、呼子を思い切り吹いてほしい。君が笛の音を届けてくれたら、この闘いは必ず勝てる!」
イカルは両手を少年の肩にのせ、ぐっと力を込めた。
力をもらった少年は、もう震えていなかった。
「よい顔だ。絶対に勝つぞ!」
イカルの言葉に、少年は力強く頷いた。
配置が一段落すると、イカルは街道筋に新たに見張りを立たせた。
「ちょっと、出かけてくる。体力のある者が交代で見張りに立ち、残りの者は今のうちに休んでくれ」
「どちらにお出かけで?」
村人たちはイカルがいなくなることを不安に思っていた。
「わたしが出かけているうちに、ひょっとするとカフラの方面から治安部隊が来るかもしれない。来たら、これを渡してほしい」と封書を渡した。
「イカル様、治安部隊が来るかもしれませんが、ハイラルの兵士たちも来るかもしれません。そのときは……」
「その心配はない。わたしがいまから行くのが、そのハイラル領だからな」
「げえっ!」
村人たちは驚愕した。
イカルは笑って、「心配はいらぬ。作戦の一環だ。ただの思いつきではない。お前たちを見捨てるつもりなら、最初からここに来たりはしないよ。なるべく早く戻る」
と言い残し、ハイラルの道に入っていった。
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