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「……わしの指示を聞かずに、宇都宮まで上野介を狙撃しに行き見事なまでにしくじって帰ってきたものがいるというのに、まだかように粋がることができるのか、おい根来の坊主ども」
なぶるような物言いだった。
蔑んでいた男に逆に侮られる屈辱が今度は法師たちを焼いた。
だが、効果的な反論はできない。
開陳されている話は事実に他ならないのだから。
口を開けばつけこまれるだけだ。
「そもそも土井さまからのお指図は、本多上野介を失脚させるための材料を拾ってこいというだけのものであるのに、功にはやって狙撃に走るという短絡さがわしにはまったくわからんよ。もっとも、紀州の山奥の田舎者にとっては当然の発想なのかもしれんがな。それとも、そんなにも根来寺の再建が欲しいのか、ううん? それで得たもの――いや失ったのは毛深い腕一本か。思った以上に、高くついた買い物だのお」
男たちは言葉もない。
確かに、確かに、その通りだからだ。
「貴様らが相手にしているのは、戦国を生き延びた恐るべき策略家本多正純なのだということを忘れおって! なんでも力任せの田舎の忍びでは相手にならんわ!」
「ぐぐぐぐ……」
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