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その宇都宮の町を薄汚れた墨染めの衣と袈裟頭巾の二人の法師が歩いていた。
道行く人も数多いことから、本来ならばとりたてて目立つことはなかったはずであるが、背中にかついだ大きな皮袋の異様さがすれ違うものたちの興味をひいていた。
名を黒歯坊と藍婆坊という。
それぞれ法華経に登場する十羅刹女――十柱の女性の鬼神から名を頂戴した根来寺の秘蔵の忍術僧である。
彼らの同胞である根来同心たちが鉄砲方としてすでに宇都宮の町に配属されていることもあって、あまり珍しい格好ではない。
ただし、彼らを見る人々の眼は厳しい。
まるで厄介者を眺めるような冷たさだった。
「なんじゃ、この町の田舎者共。拙僧らを蛇蝎のように眺めおって。気に障るぞ。もしや、拙僧たちが忍びとしてここに送られてきたことを知っておるのか」
「そんな馬鹿なことはあるまい。おれたちはここに初めて来たのだ。おそらく、先行している阿含坊どもが勝手気ままにふるまっておるのではないか。徳川に召し抱えられたといっても、結局はやつらも根来の僧兵よ。借りてきた猫のようにはいかぬだろうさ」
「なるほど。それならわかる」
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