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ゆえに、本多家に心の底から忠義を尽くす気は毛頭なく、根来同心たちは城内を勝手気ままにのさばり、城主の正純のことさえも「成り上がりのにわか大名」と蔑んでいた。
正純は根来同心が江戸城においては鉄砲方として警備役についていることから、本丸の城の狭間(城の櫓、塀などに設けた矢や鉄砲を打ち出す窓)の工事を監督させたのだが、これに対しても反発した。
「我らは公儀からお預けになっているのであり、本多家の私用に使うことはできないはずだ」と抗議したのである。
それに対して正純は「城の狭間を作るのは軍役であり、本多家の私用ではない。ゆえに根来同心が引き受けても差し支えない。また本丸の工事は将軍家をお迎えするためのものである」として聞き入れなかった。
根来同心が本多家の家臣として配属されている以上、正純の言い分が正しいのだが、正否は問題にならず、ただ単に両者の関係が険悪になっただけである。
こういったこともあってか、根来同心には昼から酒を飲んで仕事を放棄する者たちが多く出始め、明るいうちから町で騒ぎを起こすようにもなり、城下町の整備をしていた正勝を悩ますようになっていた。
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