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次の瞬間、正純の身体は隣の茂みの中から飛び出してきた何者かによって突き飛ばされ、 同時にぷしゅっという気が抜けたような音がする。
「ぬっ!」
正純を突き飛ばした者がなにやら呻く。
倒れた地面から見上げた先には、威風堂々と周囲を睥睨する大男がいた。
最初、野の狼が二本の足で立ちあがり、衣類を着こんでいるのかと勘違いするぐらいに精悍すぎる顔つきをしていた。
突然現れた大男は自分が押し倒した正純のことをまったく見ようともせず、仁王立ちのままどこやらを睨んでいる。
「なんだ、今のは?」
敵ではないと判断し、大男に声をかける。
それに対して大男は、
「狙撃でござる」
と、まったく油断もせず、驚きもない様子のまま答えた。
狙撃とは物騒極まりないではないか。
「何者の仕業か?」
「わかりもうさぬ。拙者、鼻がよう利きますゆえ、遠くより火薬の臭いを嗅ぎつけて、ここで大殿が狙われているのに気が付いたのでござる」
「鉄砲にしては音がしなかったぞ」
「長筒の先に、なにやらけったいな筒をぶらさげておりました。あれがきっと鉄砲の音を消すからくりなのでございましょう」
「……なるほどな。では、おぬしは何者なのだ?」
「それを語るのは後回しということで。拙者は、今の忍びをぶった斬りにいってまいります。この宇都宮のお城で大殿の命を狙うなどという暴虐をなしたこと、断じて許すわけにはまいりませぬゆえ」
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