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天界では幾つかの世界をそれぞれ担当の神が統治し、治めている。大規模な世界であれば複数人で分担することもあるけれど、彼が任されたのはほんの小さな世界だった。
その世界は、穏やかで変化のない天界における、神々の娯楽ともいえる世界であった。特に女神たちに人気で、誰がヒロインとくっつくのかとあれこれ推測しながら世界を覗いていた。
はじめはよかった。不遇な幼少期を過ごしたヒロインが、最後には白馬の王子様に見初められるという王道なストーリーを幾度となく繰り返しておくだけの世界であったので、担当の神は毎回同じようなヒロインの魂を見つけてきては、同じように環境をセットするだけ。なんともつまらない仕事だった。
ところが、ずっと同じストーリーでは飽きがきてくるのも事実。娯楽として楽しんでいた女神たちが次第に口出しをするようになってきた。だんだんとストーリーは極端になっていき、ヒロインへのいじめが過激化していった。
するとそんな酷い運命に耐えきれず、ヒロインとしての幸せを掴む前に人生を諦めてしまったり、想定していいた道から外れていってしまうヒロインが続出。加えて女神たちは、ヒロインがかわいそうだのなんだのと口を出してくる。
うんざりした担当者は、どうにか解決策はないかと考え、思いついた。そうか、苦難に耐えれば幸せになれるということを事前にヒロインへ伝えておけばいいのだ。
地球で乙女ゲームなるものをやっていた魂はそういった意味で都合が良かった。記憶を保持したままヒロインに転生させることで、多くのヒロインは自分が特別な選ばれた存在であることを自覚し、不運にも耐えられるようになった。
ところがまたもや問題が発生。今度はヒロインが図太く成りすぎたのだ。自分は特別だ、という認識から世界を思い通りにしようと暴走し始めるヒロインが多くなってしまった。悪役令嬢はヒロインをいじめるどころか、逆にヒロインに貶められ、酷い目にあう始末。
そこで今度は、悪役令嬢に乙女ゲームの知識を持つ魂を採用してみると、悪役令嬢がヒロインに成り代わってしまうということが多発した。それはそれで人気ではあったのだが、一応苦労をしてきたヒロインも存在しているわけで、彼女たちが報われないままというのも気の毒だ。
困り果てた神は、いわゆる悪役令嬢ものも知識としてもった魂をヒロインにすることに決めた。そうすれば自分がヒロインであることを自覚しつつも、暴走すればその地位はあっという間に奪われてしまうということも理解してくれるだろうと。
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