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長いこと夢を見ていた気がする。ぼんやりと重い頭を抱えてゆっくりと起き上がった。
今、何時だろう。早く着替えないと遅刻しちゃ──
そこでふっと意識が戻った。私はいったいどこに行こうとしていたのだろう。いつも朝は世話係のジーナを呼んで、それから、それから。
頭がひどく痛む。なにか大切なことを忘れているような、靄がかかったような気がして気持ちが悪い。
とりあえずシロにエサをやらなくちゃ。
シロって誰だっけ。ああそうだ、三年前に道で拾った猫だ。もらい手が見つからなくてそのまま気づいたらうちの子になってたんだっけ。
あれ、ちがう。そんな猫はうちにはいない。いるのはお父様の使う馬だけで──
私の知らない、私の記憶がところどころツギハギのように頭に浮かんでは消える。頭の痛みはどんどん強くなって、座っていられなくなった私はベッドへと倒れ込んだ。
私は、だれなんだっけ
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