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「僕は、見ての通りの阿呆です。これからも、あなたをたくさん怒らせるでしょう。しかし、その何倍も笑ってもらうため努力をします。そして、決して泣かせたりしないと誓います。だからどうか! このまま僕の許嫁でいてください」
返事の代わりにバレッタを高く掲げるも、涼風は受け取ってくれない。
「今度こそ受け取ってもらいたくて、これを購うぶん働いてきました。慣れない労働は苦ではあったが、あの日のあなたの赤く染まった耳を思い出すと、不思議と頑張れたんだ」
「だ、だ、だ、誰が赤くなっていたものですか! 家のものが見ているじゃないの、いい加減お立ちになって!」
差し伸べられた涼風の手にバレッタを握らせる。
「この次も、その次も、僕に会う時はつけてきてくれるね?」
「……まったく、あなたときたら本当にどうしようもない方ね」
熱い手に、赤い頬。僕の知る、可愛げのないご冷嬢はもうどこにもいない。
「この先ずっと、わたくしを許嫁のままでいさせるおつもり?」
「いいや。今はまだバレッタしか買えないけれど、いつか別のものを持ってくるよ。そしたら、その時こそ……」
僕らはこの関係におさらばし、許嫁ではなくなるのだ。
終
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