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「聡真さん。あなた、わたくしから喜怒哀楽を引き出してちょうだい。そうしたら婚約を白紙に戻して、鈴屋のお嬢様との仲を取り持ってあげてもよろしくてよ」
僕の許嫁、百々瀬涼風は「ご冷嬢」の通り名にふさわしい、冷え切った視線を投げ寄越した。
両家の親睦を深める会食の席、あとはどうぞ若いお二人で……なんて、気を回されて園庭を散策していた中での出来事だ。
「これから毎週日曜日――。あなたに、わたくしの貴重な時間を差し上げます。何でも構いませんわ、どこへなりとも付き合いますから、あなたの持てる全ての力でもって、わたくしを冷嬢などではないと証明してごらんなさい」
「よし、乗った! 絶対にあなたを喜ばせ、怒らせ、泣かせて、笑わせてみせる! だから、よろしくお願いしますよ」
条件さえ満たせば、こんな高飛車で可愛くない女とはおさらばして、鈴屋のお嬢さんとお近づきになれるんだ。
挑まないわけがないじゃないか!
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