ピンクの蝶と花が舞う

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 ちょうどその一年前。二年生最後の日。思えば、それもここ、同じ体育館裏だった。当時は在校生として卒業生を送る側だった。その日もその子に引っ張られていた。同じ体育館裏に……。その手は、一年後と同じように、しかし全く違う感情で、自分の手ではなく袖を掴んでいた。 「ずっと好きでした。付き合って下さい!」 驚いた。相手からの告白だった。可愛いとは思っていた。しかし、全てが発展途上で、初々しさとまだ見ぬ未来の希望が入り交じった、そんな容姿だった。その女の子を女性として見るには、お互いにまだ、いろいろと具合が悪かったのだ。 「忙しくてあんまり会えないかもしれないけど、それでも良ければ」 今思えば、最低な返事だった。イエスでもノーでもなく、あろうことか、条件付きのイエスを突きつけたのだ。それも「あまり会えないかも」という、最低で誠意の欠ける条件付きで……。 「分かった! やった! ありがとう!」 そう言うと、顔を真っ赤に、正確には耳まで真っ赤にして、先輩との別れで赤くなった目を再び潤ませて踵を返した。何やら自転車小屋に走って行った。そこには彼女の仲良しグループの三人がいた。キャッキャ、キャッキャとその仲良し四人組が飛び跳ねて、騒いでいる様子を遠目に眺めていた。
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