すずろ

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◆◆◆ 僕の初めての発情期が治るまでに、一週間程かかった。 やっと登校出来るようになり、今日は久しぶりの学校だ。 こんなに休んだ事は今までなかったからというのもあるが、佐野とあれ以来数日ぶりに会うのだと思うと、妙に緊張していた。 (どうしよう。どんな顔して会えば…。) 一週間、頭の中は佐野のことばかりだった。 それで気づいた。 僕は、佐野のことが好きなんだ。 佐野からもらった言葉全てが嬉しい。 佐野がきっかけでクラスメイト達との関わりが増えたことも嬉しい。 僕に触れてくれたことが嬉しい。 佐野は僕をどう思っているだろう。 興味のない人に物をあげたり、キスしたり、エッチしたりしないはずだよね…? 少しくらいは可能性あったりする…? やっぱりお祭りの時にさっさと聞いておくべきだった。今はますます聞きにくい。 「月島おはよ。もう体調は良いの?」 突然佐野から声をかけられて肩が跳ねた。 いつ間にか登校していたらしい。 「お、おはよ。もう元気…!あの、この前は色々迷惑かけちゃってごめん。」 「あー…まぁあれは事故みたいなもんだし気にすんな。」 『事故』という言葉がチクリとした。 もしかして、佐野にとってはあまり大した事ではなかった…? 確かに佐野はかなりモテる訳で、経験豊富なんだとは思うけど。 なんて言えばいいのか分からずにいると、佐野が言葉を続けた。 「今日の昼さ、ちょっと時間ある?少し話したい事ある。」 「うん、分かった。」 その話って何だろう。 ちょっと怖い…が、まだ聞いてみないと分からない。 それに、聞きたかった事を聞けるチャンスだ。 その日は、昼休みになるまで授業にあまり集中出来なかった。 遅れていた分を取り戻さないといけないのに、佐野の話が何なのか気になってそれどころじゃなかった。 午前中最後の授業のチャイムが鳴る時まで、ずっと心はざわざわしていた。
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