すずろ

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お昼休みになり、佐野に連れられて来たのは屋上に続く階段の踊り場だった。 屋上は立ち入り禁止のため、外には出られない。 いつもなら、人目につきにくい格好の溜まり場だから人がいる時がある。 でも、窓のないここは夏に集まるには不向きで、この時季にここまで来る人は滅多にいない。 佐野は、立ち入り禁止のはずの屋上の扉を開けて、暑そうに服を仰いだ。 「え、扉開くの…?」 「職員室からたまにこっそり拝借するんだよ。放課後までに戻しておけば別に騒ぎにはならないから。」 「どうやって拝借出来てるのか全然分からないんだけど…。」 「理科準備室の鍵借りるついでに、予備の方のここの鍵も取ってる。これ秘密な。」 佐野が階段に座ると、隣を手で叩いて僕にも座るように促す。 さすがに隣は気恥ずかしくて、少し離れたところに腰を下ろした。 同じ空間に二人きりというだけで、心臓がばくばくし始めた。 「祭りの日は大変だったな。」 「いや、そんなこと…。僕の方こそありがとう。」 色々と思い出してしまい、顔がぶあっと熱くなった。 バレないように下に顔を向けたが、しっかり見られてしまったようで、佐野は『真っ赤じゃん』と言いながら笑った。 それは揶揄うようなものじゃなくて、柔らかい笑い方だった。 「あの、話って何?」 「…あー、そうだな。月島とはちゃんと話しておこうかと思って。」 何だろう。 今のところ思い当たる節がない。 ……もしかして、佐野も僕と同じ気持ちだったりする…? ほんのりと気持ちを色づかせながら、言葉の続きを待った。 「その前にさ、月島は俺のことどう思ってる?俺ら友達?」 まさかの質問にますます心臓がうるさくなった。 これは、素直に伝えても良いのだろうか。 佐野も待ってくれてたりする? 中々言葉にならず緊張で吐きそうになりながらも、何とか口を開いた。 佐野は、僕が話し出すのをじっと待っていた。 「えっと…あのっ!僕は、佐野のこと、」 「分かった。それ以上は言わないで。」 そこまで言うと佐野からストップがかかった。 何で止めるのだと佐野の方を見やれば、真剣な顔をして僕の方を見ていた。 …何だろう、嫌な予感がする。 「その真っ赤な顔とそこまで聞けばさすがに分かるわ。 月島、俺はお前の気持ちには応えられない。」 じわじわとなんて言われたのか頭が理解した時、その言葉に今にも飛べそうなくらいまで膨らんでいた気持ちが一気に萎んでいくのを感じた。 それでもまだ容赦なく佐野の言葉は続く。 「体の関係持っちゃうと情持たれがちだから、ミスったと思ったんだよな。月島って純粋そうだし。 でもあれは不可抗力の事故で、勢いでヤッただけ。」 「……勢い。」 「そう、ただの勢い。あれが月島じゃなくても俺は抱いてたよ。」
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