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“悪友へ“
都心から少し外れたところにある墓地に、穂高は一人、大和の名前を探して歩いていた。
少しだけ迷った後にやっと見つけ、小さく『よう』と声をかけてしゃがみ込んだ。
お墓は、夏の容赦ない日差しに当たって暑そうだった。
大和が亡くなって、もう一年が経つ。
月島や同級生達と一緒にお墓参りに来る予定だったが、皆んなよりもひと足先に来ていた。
「後から皆んな来るよ。その前に久々に二人で話そうぜ。」
服が汚れることも気にせず、大和の前に腰を下ろした。
「俺、進学先、医学部にしたんだ。まぁ察してると思うけど、大和のことがキッカケで。」
周りは蝉の音がうるさい。
ちゃんと大和まで届いているのか心配になってきた。
「それから、お前は月島のことを一番気にしてると思うけど、今は少しずつ立ち直って元気でやってるよ。
クラスメイトとも仲良くやってる。
だからこれから来る月島は空元気とかじゃないから、安心して話聞いてやってくれな。」
しばらくの沈黙の後、言葉を続けた。
これを伝えたらいつか大和に怒られてしまいそうだが、大和だからこそ聞いて欲しいと思っていたことだ。
「…俺さ、月島のこと好きだよ。お前が生きてたら、正々堂々と気持ちを伝えられたんだけどなぁ。
大和との想い出をずっと大切に抱えてる月島の心に入り込む余地なんて、全然ねぇや。
でも、お前の代わりにちゃんと守っていくから。」
ふぅ、と息を吐きながら見上げた空は、どこまでもどこまでも真っ青だ。
そんな空を走るさわりと心地よい風が、俺の体を撫でていった。
二人の絆は深い。
きっと月島は大和を想い続けていくのだろう。
それでも、許されるのなら月島の側で支え続けるのは、ずっと俺でありたい。
願わくば、月島の心からの笑顔が向けられる先は、俺でありますように。
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