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第2話 僕のせいだ…
そんな時に、僕は人生を大きく変える2人の友達に出会った。
その2人も僕と同じ嫌な環境で過ごしてて、そこがちょっと通じ合ったりして、お互いの愚痴とか話し合っていた。
(あ、僕って1人だけじゃなかったんだ…)
って初めてそう思ったのがこの時だった。
僕は、小学生ながらに
「自分の家ってちょっとおかしいのかな」
って思ってた。
でも違った。
僕と同じ人がこの世の中には、たくさんいるって気付かされた。
僕とは違う普通の人がとても羨ましいと何度も何度も思ったし、普通の人に自分の家の事情を話すのが僕にとっては怖かった。
自分と同じような恵まれない家庭環境の中で過ごしている人がいるって知って、僕はしょうもないけど嬉しく思えた。
それから僕は、
(僕みたいに辛い気持ちを持っている人はたくさんいるんだ…。多分、人にはそれぞれ辛い過去が1個や2個ある気がする)
そう考えるようになった。
けれど、嬉しかった気持ちはあっという間に消えてってしまう。
実はその2人の友達が病気だった。
その事を知ったのは、仲良くなって1年後ぐらいに教えてもらったんだ。
1人はガンで、もう1人は白血病だった。
僕は、2人はいつか死んじゃうんだって事だけは分かってた。
その時、
「なんで、死ぬのは僕じゃないんだろう」
ってずっと考えてた。
その2人のうちの白血病の子は、彰人って名前の優しい人だ。
僕が小学6年生の時に彰人の病気が悪化した。
薬とか治療とかもろもろで髪の毛が抜けたりしてた。
入院中のベッドの上で座っていた彰人から、
「髪の毛無くて可愛くないでしょ」
って言われた僕は、
「そんなことないよ」
しか言えなかった。
それしか言えなかった理由なんて僕だって分からない。
でも多分、何か言ったらそれがマイナスになっちゃって症状が重くなるんじゃないかって怖かったんだと思う。
「彰人が死んじゃったらどうしよう」
って気持ちでいっぱいだったと思う。
そんな不安を抱えていた時のこと…。
プルルルッ!
彰人から電話がかかってきた。
その時の出来事は今でも忘れられない。
(…嫌な予感がする)
そう思いながらも僕は電話に出た。
「俺、死のうと思ってる」
と言ってきた。
僕の頭の中は、真っ白になった。
(…え。今なんて言ったの?死のうと思ってる?どうして…。僕が思っていた以上に彰人は限界を超えていたんだ…)
彰人にどんな言葉をかけたらいいのか、分からなかった。
(…どうしよどうしよ)
僕が混乱している中、彰人は話を続けた。
「病気に負けて死ぬのは嫌だから、だったら自分から死を選んで、病気に勝ちたいんだ」
そう電話で言ってきた。
僕は彰人に何も言えなかった。
だって、『生きて!』って言うのは彰人にとっては残酷なんじゃないかって思ったんだ。
だから、
「そっか」
しか言えなかった。
彰人の背中を押す事しか僕にはできなかった。
それが、後に後悔をするんだって頭では分かってた。
分かってたけど、もう何も分かんなくなってきたんだ。
僕自身も幸せっていうものが何か分からなかったんだ。
愛されてはいたけど、母は兄と平等に愛してくれる事はなくて辛かった時を今でも忘れていない。
僕との電話が終わったその後、
『彰人が自殺を図った』
と彰人の両親から知らせを受けた。
なんとか、彰人の弟さんがギリギリで助けてあげられたらしい。
『彰人は死のうとしたけど、助かった』
と分かった時、僕は安心したのと後悔などで膝から泣き崩れた。
そして、その後病状も回復して、無事に退院できたらしい。
(もし、僕が止めていれば……)
そんな気持ちが次々と込み上げていた。
でも、後悔してももう遅い。
あの時僕が止められなかった事、もし弟さんが助けてあげられなかったら、生きてる人生を僕が……って思うと、とても怖かった。
今では、彰人はどこかで楽しく過ごしてると思う。
でも、僕は彼に一生連絡は取れないだろう。
「彰人が今もこれからも幸せでありますように」
そう願うばかりだ。
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