映画のラストシーンのような

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映画のラストシーンのような

薄暗い倉庫に響く銃声。 私たちは最後の敵を追い詰めたが、敵は諦めていなかった。 αは警戒を怠らず銃を構えていたが、その背後から別の敵が現れたのを見た瞬間、私は無意識に身体が動いた。 「α!危ない!」 私は叫びながら、彼の前に飛び出した。銃声が鳴り響き、胸に激しい痛みが走る。私は床に倒れ込み、視界が薄暗くなっていく中で、αが駆け寄ってくるのが見えた。 彼の表情は驚きと恐怖で歪んでいた。 「β!何で…」彼は震える声で言った。 私の手を取り、その温かさが一瞬だけ安心感をもたらした。しかし、私の身体から力が抜けていくのを感じる。視界がぼやけ、音が遠のいていく中で、彼の顔だけは鮮明に見えていた。 「α…いや、乾。ずっと君を守りたかったんだ」私は息も絶え絶えに言った。彼の目には涙が浮かんでいた。彼が泣くなんて、初めて見た。 「神名…お前、馬鹿だな…」彼は泣きながら言った。その言葉に、私は微笑んだ。普段はβと呼ばれる私を、本名で呼んでくれた。それだけで、全てが報われた気がした。 「君が…無事なら、それでいい」 私の声はかすれていたが、乾には届いたようだ。彼は私の手を強く握り締めた。温かい彼の手の感触を最後に、私は静かに目を閉じた。薄暗い倉庫の中で、私たちの絆は最後の瞬間まで続いていた。 「神名…ありがとう」彼の声が遠くから聞こえ、私はその言葉を胸に抱きしめながら、静かに意識を手放した。
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