《新たな恋》

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《新たな恋》

 SSRリナを渡すために来夢はカフェに行って連絡先を聞こうとしていた。  だが恋をしている相手だ。なかなか上手くいかない。 「よーし、僕の出番だな」  ビリーは屋上に行き弓矢を取り出した。ピンと張った弦に弓矢を通して引っ張り上げる。 「来夢が上手くいきますようにっ!」  弓矢を放ってしまえばこちらのもの。壁を透き通って来夢の心臓に突き刺さった。  来夢が動いた。カウンターで席を拭いている豊口に近づく。 「あの。SSRリナが出たんで渡したいんですけど……」 「えっ、覚えていてくれたの! ありがとう! 俺、全然できなくてさ」 「あのさ。あのリナって子が好きなの? キモいんだけど」 「え、」  観察しながら豹変してしまった来夢に違和感を覚えるビリーではあったが……気づいてしまった。  来夢に放ってしまった矢は気持ちを冷ましてしまう鉛の矢であったのだから。ビリーは慌ててカフェに戻る。 「ていうかあの音ゲー、全然面白くなかったんだけど。すごいつまんなかったんだけど」 「えっと……あの」 「あなたのこと好きだったけどやっぱりやめます。じゃあね」 「え、あ、SSRリナちゃんは!??」  出て行ってしまう来夢をビリーは追いかけた。だが彼女は泣いてなどいない。  逆にすっきりとした顔になっていた。 「ビリー、恋を応援してくれてありがとう。でも、今回はやめておくよ」 「で、でも! まだチャンスがあるかもしれないし……。やっぱり謝って――」 「あなたにする。怖いけれど優しいあなたの心を射止めて見せる」 「え……?」  どういうことかわかっていないビリーに来夢は手を繋いだかと思えば走り出す。  その姿を天界で見ていた恋情神セレスは満足げな顔をしていたのだ。 ~Fin~
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