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毎度のこと足を軽くほぐす。そして前回とほぼ同じ位置で待機。
貨物車両の位置は確認できた。ほとんどだ。前方の数両が乗客用。その後ろはほぼ全部貨物車両だ。
それだけチャンスが多いと言える。つい笑みがこぼれる。
「よし……やってやるぞ!」
オレンジ色の明かりを揺らしながら、いよいよ列車がきた。
僕も駆け出す。
確かにゆったりとしたスピード。それでも僕の全力疾走よりは速かった。
列車の速度に合わせ、手すりを掴むタイミングを確認した後、とうとう貨物車両が僕の横に顔を出した。
ちょうど前方の扉付近にカンテラが掛けられていて、手すりもよく見える。
いける。いけるぞ。
しかし、相変わらずショルダーバッグが暴れる。
「ああ、もう!!」
何を思ったか僕は、そのショルダーバッグを手すりの上部目がけて放り投げた。
そして見事、上部の出っ張りに引っ掛かった。
よし、荷物を乗せることに成功した。僕を置き去りにして。
……馬鹿なことをした。
あのバッグには僕の旅の必需品、全財産が入っている。何としてでもこの列車に乗らなければならなくなった。
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