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「ちょっとぉ、そこのお兄さんっ!!」
そお呼ばれて周りを見渡すと、見知らぬオバサンがボクのほうを指差していた。
目の覚めるようなショッキングピンク色のワンピースを着て、大きな手荷物を持って立っていた。
「ボ、ボク…ですか…?」
オバサンは大きく2回頷き、差していた指で“こっち来い”と言わんばかりにボクを呼んでいる。
な、何だ?このオバサン?偉そうに!
腹立たしい気持ちを抑えながらゆっくりオバサンのほうに近づいた。
「な、何か用ですか?」
「兄ちゃん、アレやろ?えぇっとぉ…ユ…ユ…、ユゥバァ……あ!せや、ユーバーエイツ!」
ボクは若干ズッコケながらオバサンにつっこんだ。
「はぁ!?なんですか!ユーバーエイツって!ビミョーに全部間違ってるし!UberEATS(ウーバーイーツ)ですけどぉ…。」
「兄ちゃんオモロイなぁ。ノリツッコミ完壁やんっ!ヨシモトかぁ?」
「いえいえ、ヨシモトと違いますよ。ボクはただの配達員です!ところ
で、何なんですか?」
「えぇぇぇ?い、今…ナンなんですか?って言うたん!?
えぇぇぇ!オバチャンはライス派やわぁ。
ナンもええけど、日本人はやっぱり、お・コ・メやな♡。キャハハー。やっぱヨシモトはオモロイなー。」
そう言ってオバサンは一人で笑いのツボにはまり、ボクの存在を忘れている様子なので
「あの…、用がないならボクは失礼しま…っ…うわぁぁぁ!」
さっきまで笑い転げていたオバサンが真剣な顔でボクの腕を掴んでいた。痩せて血管の浮き出た細い腕からは想像できない力に驚いた。
「兄ちゃん配達員やろ。届けてほしいもんがあるねん。」
「え?あぁ、お届けものですか?」
「お願いできるよね?ね?ね?ねー?」
ふざけたオバサンではあるが、仕事となると話は別だ。ボクは貧乏学生でいくつかバイトを掛け持ちしているが、この配達の仕事が1番給料が良い。なので一件収入が増えると助かるからだ。
「もちろん!」
「さっすが、ユゥバァースイーツやな!
ほな、早速ぅ…あ、コレコレ…っと。」
そう言ってオバサンは持っていた手荷物の中から30センチ四方の箱を取り出しボクに手渡した。
よっぽど大事なモノなのか“ワレモノ注意”や“取り扱い注意”等のラベルがあちこち貼られていた。
商品名は “靴”となっていた。
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