*《夢で》

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*《夢で》

 夜勤明けで疲れて実家へと帰宅した芦名(あしな) 拓真(たくま)、現在25歳は母親に一言二言言葉を発してからベッドへ寝転んだ。 「あー、疲れた……。今日は脱走する人が居たから大騒ぎだったな」  拓真は精神科の看護師を任されおり急性期病棟に勤めている。特に今日の夜は脱走した患者がいたせいで仮眠が十分に取れなかった。  時計は現在、午前10時を回ったところ。疲労も溜まっていたので瞳を閉じて数秒で眠った。  目の前には日に焼けた大柄な男がこちらを見てにこりと微笑んでいた。だが自分も相手の男も素っ裸である。 「どうしたの、拓真。こっちおいで」  手招いた先には張りがありガタイのいい筋肉質な肌に触れてしまう。触れたかと思えばそこから首筋を舐められた。 「んぅ……、ちょっと、待てって……!」 「拓真があんまりにも可愛いから悪戯したくなるんだよね。――ほら、ここも触ってておねだりしてる」  男とは違い自分の貧相な身体の下を見ると……反り上がっていた。羞恥心のあまり足を閉じようとするが男は間に入り笑みを零す。  男が勃起しているかは不明だ。 「ほら、こ~んなに(よだれ)垂らして、ヒクつかせているよ。可愛い」 「か、可愛くないだろ! 気持ち悪いな……」 「可愛いよ。だから、ご奉仕してあげるね?」  それから男に局部を触れられたかと思えば強弱をつけられて(なぶ)られる。蹂躙される思いに拓真の身体が熱くなり――達しそうになった。 「や……ばい、イ、イクっ!!!!」 「いいよ、――イッて?」  白濁液が日焼けした男の肌に染みわたり……目を覚ました。目を覚まし布団を除いた途端、――絶望した。 「うわぁ……。夢精しちゃったよ。しかも弟とエッチする夢でしちゃった」  太い息が出た拓真はバレぬようにパンツを履き替えて風呂場に行き、汗を流した。  拓真には父親が違う弟が居る。拓真の実の父親は離婚し新たな父親と母親が再婚したのだ。それは拓真が3歳くらいの頃で、5歳の頃に弟が生まれた。  弟は玲央(れお)と言い、高校生の頃までラグビーをやっていたのだが家が好きなのか期待されていたのにも関わらず、大学ではゆるいラグビー部に入っている。  だが拓真と違うのは、拓真は瞳が大きく華奢で色白な男であるというのに、玲央は正反対であること。  日焼けした筋肉質な身体に鋭い瞳に拓真よりも幾分端正な顔立ちをした男らしい男なのである。  そんな男と夢で致してしまった。今でも仲良くしてくれる弟が自分とエッチな夢を見た……などと言ってしまったらドン引きであろう。  シャワーを浴び終えて湯に浸かる。今日はかぼすの湯であった。 「はぁー……。俺、欲求不満なんだ。それしか考えられないよ」  芦名 拓真、25歳。現在どころか彼女が居たことがゼロな童貞である。  そんな彼は風呂から上がってタオルで拭いていると、ガチャリと音がした。 「あ、拓真じゃん。おかえり」 「あ……、れ、玲央」  同じくシャワーを浴びようとしていた玲央と鉢合わせになったのだ。
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