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《立食パーティー》
待ち合わせ場所に向かうと黒シャツに白のデニムを履いた修作が手を振って待ってくれていた。
さらりとした黒髪はワックスで固められ、黒縁眼鏡を掛けた優しげな顔をしている。イケメンというよりかは愛想の良い顔をしているのが修作である。
「やっと来たな~、待ちくたびれたぞ」
「ごめんって」
「玲央も久しぶりだな。おいおい、こんな色男になっているなんて聞いてないぞ」
「修作さん久しぶりです。相変わらず元気そうでなによりです」
敬語を使いつつもにこにこと微笑んでいる玲央にやはり修作のことが好きなんだなと拓真はほっとした。
玲央はドライな部分があり、相手と自分が釣り合わないと感じると縁を切ってしまう悪癖がある。彼女に関してもそうだ。「なんか違う」「釣り合わない」「違う」などと言ってはばっさりと切って来た。
そう思うと今の彼女は執着心がかなり強いのかもしれないなと拓真はふと考える。
「さて、ここから15分くらいで会場だろ。まぁ、拓真は彼女探しとして俺や玲央は食事がメインだな」
「……そうですね」
「一応、バイキングではあるらしいし良いか。俺も小説の参考になるしな。よし、行くぞ」
修作の合図で三人は会場へ向かうのだ。
立食パーティーでは現在、拓真は途方に暮れていた。まず、プロフィールカードというものを配られて書き、名札を付けて挨拶をしあってから食事という流れなのだが一向に話しかけられないし話せないのだ。
というよりも、女性の層というかランクといえばいいだろうか。失礼だがいかにも芋臭い女性が居るのだ。そういう女性はさすがに避けてしまう。
しかし宝石のような女性もおり声を掛けようとするのだが――
「へぇ~、玲央くんってまだ大学生なんだ。可愛いね」
「ありがとうございます。それ言われると照れちゃいます」
「ねぇねぇ連絡先交換してよ! 最初はお友達からでさ」
「ごめんなさい。したいんですけど……俺、彼女が居て。今日は兄が来たいって言うから心配で来たんです」
「お兄ちゃん来てるんだ。どこ?」
玲央が拓真に手を振り振り返した。するとぞっとする。女性たちのお前なんて興味ないという高圧的な視線が迫ってくる。肌身を感じさせる。
怖くなり修作の元へ行くのだが修作もなにげに楽しんでいた。
「へぇ~、イラストレーターを目指しているんですね。僕も小説家を目指していて」
「そうなんですか、奇遇ですね! お互い、芸術面に特化しているなんて」
「お友達からでも良いから連絡先交換しませんか? 創作仲間とか欲しくて」
「いいですよ」
瓜実顔で陶器のように白い肌をした女性と連絡先交換をしている修作とモテまくっている玲央に殺気を覚えた。
(――どうせ俺は童貞ですよっ!)
怒りながら生ハムのパスタを頬張っていたのだ。
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