《合コンでも……》

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《合コンでも……》

「いやぁ~、芦名が来てくれて良かったよ、うん」 「あ……はい。すみません」  あからさまに怒っている様子の奥山に拓真は頭が上がらない。だがその頃、玲央は複数人の女性の相手をしていた。玲央は声の口調的に戸惑いなどない。淀みもなく優しげに話している様子であった。  にっこりと気味が悪く微笑んだ奥山は拓真の肩を叩いた。拓真は軽く悲鳴を上げる。 「……まさかお前の弟があんなに人気出るとはな。この落とし前、どうする?」  奥山と男性陣の殺意にも似た視線に拓真は青ざめて――逃げだした。 「あっ、芦名っ! てめぇ覚えておけよっ!」 「ご、ごめんなさ~い!」  逃げ出した先で拓真は元の道を通りラウンジに向かった。急いでいてあまり見ることが出来なかったが小さな水槽があり魚が泳いでいる。  奇麗だな、ふと思って水槽に近づきじっと見つめる。青く澄んだ色調に熱帯魚が遊泳する姿はなんて素敵だろうかと思う。 「あ、拓真だ。こんなところに居たんだ」 「……玲央。なんでここに?」 「なんか俺が居ると同僚の人たちの雰囲気が悪くなるから、やめたんだよ」  玲央も同じく水槽を見て「奇麗……」だなんて呟いた。距離が近づき手と手が触れ合う。それがなんとなく心地よいが羞恥心を伴わせる。 「いいのかよ? 女の子とか、その――彼女のこととか、さ」  玲央が幾度目かの困ったような表情を見せた。 「女の人とは話したけれど肉食獣っぽい感じしたからなんか嫌。彼女はな~、杏奈とは穏便に別れようとしているつもり」 「俺に被害を出させるなよ?」 「そうならないようにしたいんだけどね」  淡々とした口調で話す先には手と手が触れ合って絡み合い、繋いでいく。肩さえも寄り添う姿に拓真は鼓動を跳ねさせる。  今日は合コンに来たというのに邪魔者扱いをされてしまった。だが玲央も同じ目に遭っている。――どうして自分なんかに歩調を合わせるのだろうか。  魚たちが楽しげに踊る。邪険にされたのが寂しいが玲央も同じ目に遭ってくれているのだと思うと、どうしてだが嬉しい。 「……帰ろっか」 「え、いいの?」 「うん。俺も寝たいしさ。それに、俺もお前も邪魔者だろうし」  今度は拓真が玲央の手を取って歩き出す。玲央が呆気に取られたかと思えば嬉々ととして肩に寄り添った。 「同じ邪魔者同士ってことでこれからも仲良く行こうね」 「その前にお前は穏便に彼女と別れるんだぞ?」 「はいはい。拓真くんがそうおっしゃるのならそうしますよ」  スマホで奥山に謝罪のメッセージと帰ることを伝えれば、支払いはしなくても構わないという返答が来た。  玲央が居ただけでも女性たちが盛り上がったり帰ってしまったことで盛り下がったりしたのもあるらしいが、なんとか合コンは上手くいったようだ。  だが拓真は合コンが始まる前でさえも玲央によって邪魔をされたことを気づくことはない。それだけ拓真は鈍感であり、玲央に対して甘々なのであるのだ。
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