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*《ムラムラ》
その日の夜。普段よりも遅めに帰宅した拓真と玲央は冷蔵庫にあった夕飯を食べ終えてから拓真と玲央の順番で風呂に入った。今日はひのきの湯であった。
風呂から上がり、髪の毛を乾かしてから自室へと戻った拓真ではあるがなんとなく疲弊の息を吐き出したのだ。
今さらながらではあるが、せっかく合コンに来たのに女の子一人とも口を利かずに、しかも連絡先交換でさえもできなかったのだ。みじめにもほどがあるではないか。
「うむ、まぁ今日はすぐには眠れないし明日は夜勤だし……夜更かしでもするか!」
頭を切り替えた拓真はパソコンの前に座りイヤフォンを付けてなにかを打ち込む。打ち込んだ先は”無料セクシービデオ”であった。
際どい広告が彩る動画内にて拓真は爛々とした瞳でなにを観ようかなと思いを馳せる。――そして見つけた。
BLの類だがイケメンな男優がマッチョなイケメンに押し倒されてマッサージをされられるセクシービデオであった。
クリックをして動画を拝聴する。初めは男性同士のキスが始まり、それからオイルでマッサージをしながら局部に触れていくというものだ。
しかも受けの男優がフェラをするのだが手と口を使って卑猥な音を立てて筋肉質な男優の憎たらしいほどの巨根を咥えこんでいる。
どうして今日の自分がマッサージBLを観たかったのかはわからないが……とてつもなく興奮した。だからズボンもパンツも引き下げて、自身の手にすっぽりと収まる局部に触れていく。
男優が根元から先端に向けて上に下にと動かしていく様を拓真はじっと見て真似る。
「んぅ……んぅ、はぁっ……ふぅ…………」
情けないが気持ちが良い。自分の手でさえも昇天してしまいそうになる。もう射精しそうになる――白濁液をティッシュを持ち運ぼうとしたとき、誰かに抱き締められていた。
「え、だ、誰?」
慌ててイヤフォンを外し抱き締めている相手を見ると、ミントの香りをさせた玲央が居た。
「なにオナってんの。変態拓真くんはさ」
「なっ、れ、玲央!? 離れろって!!」
「嫌。今の拓真があまりにも可愛いから離れられない」
なんと自慰行為中にも関わらず入室してきた弟に慌てない兄などいない。すぐさまパソコンの電源を切ろうと手を伸ばそうとするが、阻まれてしまう。
画面は受けの男優が攻めの男優の股間をじっくりと舐めているシーンでストップされていた。玲央が急に近づき耳元をべろりと嬲る。
「ふぅ……ぅんっ……」
「変態拓真くんはおちんちんを舐めたかったのかな?」
「ちがっ、あぅっ……!!」
耳元に色香が漂う声とミントの香りがする室内で――二人は視線を合わせた。視線が交わったかと思えば、玲央が軽くキスをする。
初めてのキスはミントの味がした。
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