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《行方不明》
玲央に告白され流されるように付き合うことになった拓真ではあるが、まだ実感がなかった。
「でさ~、公募に最終審査まではいったのは良いものの、ま~た佳作だよ。デビューじゃないんだよ」
「……ふ~ん」
「あっ、聞いてないだろ俺の話を。この変態サキュバス野郎!」
「変態は関係ないだろう……」
現在、修作が公募で送った小説が佳作で止まった……という話を聞いている。だがデビューまでには至らなかったようだ。
しかしそんなことよりも、父親は違うが実の弟と交際しているという事実。今のところ告白までされたが、エッチなこと以外はしていないのだ。
玲央としては「今の彼女とちゃんと別れてからにしよう」などと話しているが本当にその真意で合っているのかわからない自分が居る。
玲央が自分と興味本位で付き合っているのかと思うと、その事実が刺さった瞬間に兄弟として居られない自分も居た。
修作が深く息を零した。
「まぁそんな俺を慰めてくれってことで、――激励会、よろしく」
「え、まじかよ!」
「俺の激励会をすることによって、お前も気が晴れるし俺は慰められるからな。玲央連れて三人で行こぜ」
「え、まぁ……いいけど、さ」
その玲央と深い繋がりを持ってしまったのだと言おうとしたがやめておく。このご時世に男同士でしかも兄弟でなんて普通の人間であれば忌み嫌うだろう。
修作との電話を切り、ベッドに寝転んだかと思えばパソコンで『兄弟愛』などと調べる拓真ではあるが――あるのは禁断愛をモチーフにしたBL作品のセクシービデオであった。
「やっぱりそうなるよな~。男同士ってだけでもファンタジーなのに。まっ、深く考えるのはやめよう」
単純で直感型思考の拓真はセクシービデオを漁りながらふと思い立った。そういえば以前購入したローターという大人のおもちゃが届いたはずではなかったかと。
拓真はパソコンで配送先を見る。検索してみると配送は完了しているらしい。
一気に顔が青ざめていく気がした。
「まずい……。母さんか父さんに見られたかな? もしくは玲央? うわぁ……どうしよう。で、でも、こういうのって化粧用品とかって扱われるらしいし!」
一気に顔が蒼白した。化粧用品などといったら母親に開けられる可能性があるではないか。そして開けてみたらピンクのおもちゃ――笑えない。
拓真はすぐにドアを開けて宅配ボックスへ向かう。だがない。誰かに開けられたのか、などと思っていると玄関から部活帰りで汗だくになっている玲央が帰って来ていた。
「あ、お、おかえり」
「ただいま。……どうしたの、そんな顔を青くさせてさ」
言おうかどうか迷ったがその挙句に「なんでもない」そう言ってドアを開けて玲央を先に入れた。
そんな玲央はどこかすっきりとした表情を見せている。だが気づいていない拓真は話を逸らした。
「そ、そういえば修作が激励会やってくれってよ! 佳作止まりだったんだってさ」
「へぇ~そうだったんだ。すごいじゃん。いいよ、――俺も二人に話したいことあるし。いつがいい?」
「あ~、そうだな。修作に聞いてみるか。俺の都合もあるし」
「うん、了解。じゃあまた電話かけてね」
洗面所で手を洗う玲央に拓真は届けられたはずの大人のおもちゃの行方を捜していたのだ。
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