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「実は僕、今日で最後なんです」
突然の退職報告に衝撃をうけ、握っていたグラスを落としそうになる。
「今なんて? 最後って……辞めるってことだよね。いくらなんでも急すぎない?」
「すみません……確かに急、ですよね」
「もしかして独立するの?」
夏生くんは「まさか」といって首を左右に振った。まだ若い彼だがそれくらいの実力があると思ったのだけれど。
「違いますよ、家庭の事情です。僕だって辞めたくありません。オーナーにもよくしてもらえたし、董子さんみたいないいお客さんにも出会えたし」
「じゃあ、なおさら続けたらいいじゃない。週一でもいいから。お願いよ!」
「難しいです……」
そういって少し困ったような顔をみせる。
分かっている。
私のひと言で覆るような話ではないことくらい。
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