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「董子さん?」
「な、なあに?」
背後から声をかけられて心臓が止まるかと思った。
「僕、買い物に行ってきます。夕ご飯作りますね。その前に、キッチンと冷蔵庫見てもいいですか?」
「あ、ちょ……」
冷蔵庫は油断してた。夏生くんは扉を開け、しばしフリーズする。
「うわ、なにこれ。お酒しかない……」
ポロリ、と本音が出てしまったようで、
「あ、ダメだって言ってるんじゃなくてですね」
と、慌てて付け加える。
「分かっている。驚いたでしょ? 私、自炊しないの。夕ご飯は殆どロッソで食べていたし」
夕食は外食ばかりで、家で食べる時はテイクアウトかUberだ。朝は食べない。
それは哲夫も同じだったので家で自炊は全くしていなかった。
「そうでしたね、董子さんほぼ毎晩来てくださってた」
「そうなの。昼も仕事で外回りだから外食ばかりでさ、体に良くないよね」
「営業職って伺ってましたけど」
「そうそう。天羽ビールのね」
天羽ビールは日本で三本の指に入る大手の飲料メーカーだ。清涼飲料水から酒類、最近では健康食品事業へと幅を広げている。
「天羽ビールですか。知らなかったな」
「話さなかったっけ? ちなみにお酒は他社の新商品は必ず買うようにしてるから増えちゃったの! 大酒飲みという訳じゃないんだからね! 勘違いしないで欲しいな」
「なるほど、仕事熱心なんですね」
私は新卒で入社してからずっと営業畑だ。本当は開発企画の仕事に就きたいと思っているのだけれど、希望を出し続けても未だ声はかからない。
営業成績もよく、社長賞ももらった。
けれど、
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