0.同居への誘い

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「実は僕、今日で最後なんです」  突然の退職報告に衝撃をうけ、握っていたグラスを落としそうになる。 「今なんて? 最後って……辞めるってことだよね。いくらなんでも急すぎない?」 「すみません……確かに急、ですよね」 「もしかして独立するの?」  夏生くんは「まさか」といって首を左右に振った。まだ若い彼だがそれくらいの実力があると思ったのだけれど。 「違いますよ、家庭の事情です。僕だって辞めたくありません。オーナーにもよくしてもらえたし、董子さんみたいないいお客さんにも出会えたし」 「じゃあ、なおさら続けたらいいじゃない。週一でもいいから。お願いよ!」 「難しいです……」  そういって少し困ったような顔をみせる。 分かっている。 私のひと言で覆るような話ではないことくらい。
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