0.同居への誘い

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気が付けば三十代。恋人を失い、新たな出会いもなく、勢いで買った中古のマンションローンだけが残った。 「私ね、今まさに絶望の淵って所に立ってる」 「大丈夫ですか? 僕でよければ力になりますよ!」  夏生くんはいつも欲しい言葉をくれて、社交辞令と分かりつつもつい勘違いしてしまいそうになる。 「優しいね……お客さんだからか」 「いえ、董子さんだからです。本心から言ってるんですよ」 「ならうちに住んで料理作って全力で癒して。力になってくれるんでしょ?」  もちろん夏生くんは「無理ですよ」って言って笑い飛ばすと思った。 それなのに、「いいですよ」と彼はいった。私は耳を疑った。
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