俺とだけの秘密の約束

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俺とだけの秘密の約束

 通話を切った後、俺の口からは溜め息が漏れる。  今迄の行いが良かったおかげか、どうにかお咎めはなかったのだけど、初めて遅刻してしまったことに俺は自己嫌悪中で、未だにベッドの上でうつ伏せのままだ。 「でも、それは……隣りに引っ越してきた聖修のせいで……あ、いや……聖修のせいにはしたくはないんだけど……」  そうのんびりしていた俺なのだけど、やっぱり平日の昼間に家にいるのは落ち着かない。  平日の昼間。  世間の人達は仕事に学校にと大忙しの時間帯。  だけど、そのおかげなのかマンション内は静かに思える。 確かにドアを閉めていれば全然外からの物音というのは聞こえて来ないのだけど、気配を感じないというのか、そんな感じだから聞こえて来ないという事だろう。  そう昨日の夜中は聖修が隣りに引っ越しをしてきていて若干うるさくは感じたのだけど、今という時間帯というのは至って静かだ。  ま、隣の住人である聖修も昼間は仕事なのであろう。 だからもう既に今日は静かなのかもしれない。  今、世間で一番人気があるのは聖修がいるアイドルグループだ。  聖修のグループは六人組。  俺が好きになったのは社会人になった頃。  何気にニュースや歌番組でちょいちょいと出ていて、まだデビューしたてだったってことを思い出す。  テレビ番組を何気に見ていた時に、いつの間にか、そのグループの中にいる聖修だけを俺は目で追っていた。  気付いた時にはグッズやDVDも買い揃えていて部屋内には、そのグループのポスターばかりになっていたのだ。 それ程、俺は聖修の事が好きになっていたのであろう。  勿論そのグループのライブも毎年ツアーがあって、近場のライブ会場の時にはチケットを取って必ず見に行く位だ。 しかし、これだけ人気なアイドルになってくるとチケットだって争奪戦状態で、ファンクラブに入ってない一般人がネットでそのアイドルのチケットを買おうとしたら、五分以内に売り切れてしまうという、プラチナチケットになってしまう人気振りだった。 それを一回経験した俺というのは、そこから完全にファンクラブに入って、それで一番前の席をゲット出来るようになったのだから。  しかし、ライブに行くと本当に聖修がいるアイドルグループのファンというのは女の子だらけだ。  とりあえず俺はそんな事は全く気にせず、俺はファンクラブに入ってライブがあれば、チケットを取ってライブに行く程、聖修の事が好きになったいたのだ。  しかもファンクラブに入っていれば必ずチケットは手に入れられる。 だけど一般人の場合というのは、そのファンクラブの中で余ったチケットだけが売られてしまうのだから、そりゃ五分足らずで売り切れてしまうのであろう。   そしてライブなんかはファンクラブに入っている者だけが、一番前の席というのは優先で、その一番前で応援する俺。  周りにいる女性達には引かれていたような感じはしていたのだけど、俺的には本当そういう事は気にしない! だって好きなもんは好きなんだから。  だってそこはファンなんだから誰が応援したっていいだろ?  それなら好きになったら俺は応援し続ける。 っていう方だ。  それだけだ……。  ファンで思い出したのだけど、何だか逆に嬉しくなってきた。  そうだ! 今はあの憧れだった、いやファンだった聖修が俺の家の隣りに引っ越して来たんだ! だからこんな事でヘコんでる場合ではない。 聖修の事で俺の心の中は満たされたのか自分に気合いを入れるのだ。  思いっきり、ファンの子達に自慢してやりたいけど、もうそこの所は既に聖修には「他言しないでね……」と言われているのだから、それは絶対にしない。  うん……。 絶対。 俺だけの秘密という事になる。  それだけでも何だか今日はテンションが上がってくる。  確かに朝はあんな出来事があったのだけど、もうそのことを気にしないっていう事が今現実に起きているのだからテンションが上がってくるに決まっている。 それに俺の憧れの聖修との約束事でもあり秘密の事なのだから、それはそれで二人だけの物って事で嬉しい事のような気がする。
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