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冷めてしまったウィンナー
再び溜め息を吐きながら部屋に戻ると、テーブルの上には冷めてしまったウィンナーがある。
「あ……」
聖修がここに来たことで本当にスッカリと忘れてしまっていた事だ。
……ホント、今日の俺っていうのは舞い上がり過ぎ。
と反省してしまう。 いや聖修が訪問して来たんだから当たり前の事だ！ 絶対に一般市民が有名人と話をしたら、そうなるに決まっている。
心の中ではそう思い、フッと目の前に見えたウィンナーを見て現実に戻された俺は、
「とりあえず、チンだな……」
そう電子レンジという便利な物がある世の中だ。 そこに冷めてしまったウィンナーを温め直す俺。 ここで、ウィンナーをチンする時は、穴を開けておくことだ。 じゃないと、自分が熱い思いをしてしまうからだ。
そして待っている間、椅子に座って再び溜め息を漏らす。
昨日も今日も聖修が隣りにいるのに、何も話が出来なかったことに自己嫌悪。
……いやいやいや……って、これが普通だろう！
と自分にツッコミさえ入れてしまう始末だ。
有名人を目の前にして、いや……ファンとして見ている立場として、あまり言葉に出来ないのは絶対に普通だ。
頭を抱えテーブルに、うっ潰していると電子レンジ特有の音が部屋内に鳴り響く。
その音さえも今の俺には体をビクつかせてしまっていた。
「あー、ビックリしたー！」
そう思いながら徐に立ち上がり出来たウィンナーを再びテーブルの上に置くのだ。
そのウィンナーを口にする俺。
俺は女子達とは違う。 ヘコんだからって食事も喉を通らない訳ではない。
食うもんは食っておかないと、体力がなくなるのだから余計にダメになるに決まってるのは分かっているのだから。 とりあえず今はヘコんでる場合ではなく食うしかない。
だから、ここ何年も風邪だって引いたこともない。
そのおかげなのか、そこは分からないのだけど会社だって無遅刻無欠勤。
……健康っていうのが俺の取り柄だったのかもしれないのに、聖修が隣りに引っ越して来ただけで、こんなに精神的に……あー、いやいや……そこは聖修のせいなんかじゃないんだよなぁ。 うー、でも、聖修が隣に越して来たから、俺の生活がおかしくなってきた……じゃなくて……あー！ もう！ 何も考えなくて……違う、違う！ あー、もう、隣りに越して来た聖修の事は考えるのは辞めよう！ いつまでも引きずってしまうんだし……。
だけど今日は確実に隣りに引っ越して来た聖修のせいで、夜も眠れず会社に行けなかった始末。 もう、そこだって気にしないようにしないと……。
……って、聖修のせいとは思ってはいないというのか……俺からしてみたら、聖修のせいにはしたくないと言った方が正解なのかもしれない。
しかし平日のこの時間、今日は何をしたらいいんだろうか？
いつものように聖修のDVDでも見て、のんびりするか。
それが俺の休みの日の楽しみなのだから。
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