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え？アイドルが作った料理！？
平凡だった毎日が少しずつ何かが変わって来ているという事だ。
夕方まで、とりあえずDVDを見ていた俺。
聖修が出ているDVDを見ているのに、声を出して応援出来ないのも疲れてきた。 そう隣りの部屋に物音が聞こえてしまうのなら、今までとは違って聖修が出ているDVDを見ながら、部屋の中で声を張り上げて応援しないようにしたのだから。
それにそろそろ夕飯は時間だということに気付くと、俺はキッチンへと向かう。
その時、本日二回目のチャイムが部屋内へと鳴り響いてきた。
俺は急いでドアホンに出ると、そこに立っていたのは聖修だった。
挨拶回りは終わってる筈なのに本日二回目の聖修。
不思議に思いながらもドアフォンに出る。
「神楽さん？ 夕飯って作ってます？」
「あ、いや……まだだけど……？」
「あの……私が作った料理でよろしければ食べませんか？ ちょっと、今日は作りすぎてしまったので……」
「……へ？」
そんな嬉しいことがあっていいものなのであろうか。 昨日、聖修に初めて会って舞い上がっていたのに、今日は今日で聖修の手料理を食べれるなんてことは思ってもみなかった事だ。
本当にこれは現実なのかって思い、頬をつねってみると見事に痛い。 うん、明らかに現実だ。
そう人間って夢か現実かって確認するには、頰をつねるという行為だ。 頰をつねると、現実だった場合には痛みを感じる事が出来る。 もし、それが夢だった場合には痛みを感じる事が出来ないから、それを使って現実か？ 夢か？ と確かめる人が多いという事だろう。
「あ！ 分かりました！ 今、行きますね！」
俺は聖修が待っている玄関まで急ぐ。
そう俺の性格は貰える物は貰う主義だ！
例えそれが聖修じゃなくても、近所に住むおばちゃんが作って来てくれても貰う物は貰う。 遠慮なんて事はしない。 だって後で後悔するよりかはいいからだ。 遠慮して貰えるもんが貰えない方が寧ろ損だと思うからだ。
「はーい！」
俺がドアを開けるとさっきのドアホンだけではよくは見えなかったのだけど、何と！ あの聖修がエプロン姿で来ていた事に気付く俺。 これが聖修が女性であったなら男性は萌えるー！ ってなる所だろう。 いや俺の場合にはその萌えるー！ っていう言葉が頭の中でお花畑のように咲き誇っている状態でもある。
しかも、銀髪に紺色のエプロン姿。 きっと誰も見たことがない姿だろう。
本当に今の俺は心臓がいくつあっても足りない位だ。 とりあえず、その心臓を落ち着かせる為に深呼吸を繰り返す。
隣りに聖修が引っ越してきて本当に良かったと思う。 本当に聖修の私生活が見えるからだ。
ファンだって、こんな聖修の姿見たことがないのだから。 今のこの聖修の姿だけは俺だけのもんだ。
「カレー作ったんだけどね……なんか余りそうだったから食べます？」
「はい！ 勿論です！」
多分、聖修の前での俺は本当の笑顔だったかもしれない。 きっと今までにはないような笑顔だったのであろう。
丼に入れられたカレー。 本当にいい匂いがする。 きっと、まだ出来たばかりだからこんなにもいい匂いがしているのであろう。
とそんな時、エレベーター特有の音が聞こえて来た。 流石にドアを閉めていれば聞こえないのだけど、今は聖修と話をしドアを開けている状態なのだから、ハッキリと聞こえて来たのかもしれない。
「神楽さん！ ゴメン！」
そう聖修に言われたかと思った瞬間、俺は聖修に自分の部屋内へと押し込まれていた。
いきなりの事だったからバランスを崩し後ろに倒れそうになったのだけど、どうにか横にある壁で自分の体を支えることが出来て倒れることはなかったようだ。
「ど、どうしたんですか！？ きゅ、急に……」
やはり俺の方もいきなり聖修に部屋の中へと、押し込まれてしまったのだから焦るに決まっている。 ホント、今一体何が起きたのであろうか。
「いきなり、すいません……。 エレベーターの音が聞こえて来たので……ついっていうか……」
「はい？」
それだけでは意味が分かりません。 と言いたかったのだけど、まだ、そういう仲ではないのだから突っ込める訳もなく、不思議そうな表情で聖修のことを見上げるだけに止めていた。
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