1億2000万分の1

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1億2000万分の1

 更に胸がドキドキしきた。 これで俺も聖修のことが好きなのだと改めて気付かされる。  そうだ……俺は本当に聖修のことが好きだったんだ! だから胸もときめいているし、ライブの時なんか恥を忍んで聖修のこと応援してたっていうのか……俺の方に振り向いて欲しくて応援していたのかもしれないな。 改めて自分の気持ちに気付かされた瞬間だ。 「聖修……」 そう改めて名前で聖修の名前を呼ぶ。 「……ん?」 そう言うと、聖修は首を傾げながらも俺のことを見つめてきた。 「聖修さ……なんて言うのかな? やっと、俺が聖修のこと応援してきてた理由が分かったよ。 俺は本当に聖修のことが好きだったんだ。 そうライクじゃなくて本気でラブだって事……。 でも、聖修は有名人で、俺と釣り合わないっていうのか……男性同士っていうのもあったし、俺達からしてみたら聖修達有名人っていうのは雲の上の人みたいな存在だしね。 そう全く接点なんて一つもなかったし、俺的には諦めてたっていうのかな? だから昨日、聖修が隣りに引っ越してきた時は本当に嬉しくて、それで、ゴメン……その……嬉しすぎて……昨日はそのまま聖修の事をオカズにしてた。 本当に聖修とこういうことになれて……嬉しいっていうのか……恥ずかしいっていうのか……そこは色々な感情があって、まだ、よく分からないんだけど……だけど、俺は本当に聖修のことが好きみたいなんだよね」  俺は俺で今の俺の気持ちを聖修にぶつけているっていう感じで気持ちを込めて言ってみた。 こんな事だって俺からしてみたら人生で初な事なのかもしれない。 「そう……良かった。 尚もそんな気持ちでいてくれて。 尚だって、私のライブに来ている時だって、他の誰よりもキラキラしてて、なんか凄く惹かれていくような気がして、そう、歌だって、私は尚の為だけに歌ってったっていうのかな?」 「……へ? そうなの?」 「うん……。 確かに歌詞は女性向けかもしれないけど……でも、私が好きなのは尚だったから、私は尚の為だけに歌を歌ってったんだよ……」 その言葉に本当に俺の胸が締め付けられるような思いだった。  トキメキっていうのは本当によく分からない……言葉に出来ない位っていうのか……物にも表せないようなことっていうのか、そんな不思議な感覚だ。 そんな意味の言葉って国語辞書にもないような気がする。 こう人によって表現が違うっていうのかな? 「聖修……」  聖修の言葉に俺は男なのに涙が出そうになっていた。 何だろ? 十年間、想い続けていたことが、今現実になろうとしているからなのかもしれない。 いや現実になったのだからという事だ。 そうその色々な感情とか想いとかが湧き上がってきているのだから。  俺は聖修の体を確かめるようにして抱きしめる。  人の温もり。  こんなことだって久しぶりだ。  久しぶりという表現では表せないような気がする。 下手すると親に抱きしめられたりした以来なのだから。 数十年振りの人の温もりだ。 本当に人の温もりっていうのは安心する。 癒される。 心の中が温かい気持ちにさえなる。 ほわほわする。 これがきっと幸せっていう気持ちなんだろう。  人に温もりというのはこんなに温かいものなのか体温があるからっていう問題ではない。 感情とかそんな感じの温もりの方だ。  そしてこの日本だけでも住んでる人というのは一億二千万人と言われているのだから、その中の一人に出会えた事は、  偶然、奇跡、運命と言えるのであろう。  その事が重なった時に素敵な人との出会いがあるという事なのかもしれない。  聖修と恋人同士になれたことが、今迄の人生の中で一番嬉しい出来事だ。
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