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一睡も出来なかった
しかも明日は大事な会議がある。
こういう時に限って人というのは眠れないものだ。
いやきっと今日聖修に出会わなければ眠れたのかもしれないのだけど。 そしてきっと今頃は夢の中だろう。
今日、何回目かの溜め息を漏らす俺。
時計に視線を向けると、もう既に二時を回っていた。 今日の俺は一体どれだけベッドの上でゴロゴロとしているのであろうか。 確かベッドに入ったのは零時過ぎだったような気がする。
しかも明日は六時には起きて仕事に行かなければならないのに本当に未だに眠気が襲って来る気配すらない。
このままでは目の下にクマが出来たまま出勤しなきゃならない時間だ。 それは確かに大袈裟な表現ではあるのだけど、それでもマジで寝れなければ、そんな感じで仕事に行く事になるかもしれないという事だ。
とりあえず瞼だけでも閉じてみるのだけど、それはそれで今の俺には逆効果だったらしい。
瞼の後ろに見えるのは、あの聖修だったからだ。 さっき会ったばっかりの聖修の姿が完全に俺の瞼の後ろに焼き付いてしまっているっていう事なのであろう。 だって普通だったら、そんな事、あんまりなかったのだから。
「うぉおお……寝れない……」
もう今日あったことは考えないようにしないと本当にこのままでは眠れないような気がしてきた。
これが十代の時なら徹夜とかでも平気でいられたのかもしれないのだけど二十代半ばとなってくると本当、徹夜というのは辛くなってくる。 しかも翌日というのは仕事があるのだから絶対的に寝ないと仕事に支障が出るに決まっている。
もう普通にサラリーマンとして働いてきて何年かにもなるのだから二十代半ば位になれば、丁度仕事に慣れてきた頃でもあって、しかも俺は今まで失敗した事がない。 だからこれからも失敗もしたくもない。 それにその会社に就職してからというもの遅刻も欠勤もした事もないのだ。
そう普通に今迄仕事をこなして生きているだけの人生。 本当に平凡な生活を送っているだけなのだから、これからも何も起きて欲しくはないと思っている。
だからこのままいけば出世街道真っしぐらだったのかもしれないのだけど、隣りに聖修が引っ越してきただけで動揺してしまっている俺がいる。
そう色々考えているうちに、とりあえず寝付けたのは朝方だった。
空がゆっくりと明るくなってきていて鳥の囀りが聞こえてきていた。
……こう瞼の後ろで光りが……耳からは小鳥の囀りが……。
だが、その直後目覚し時計の音が部屋内に鳴り響いて聞こえて来たのだ。
正直、一睡も出来ていなかったって事だろう。
このままでは本当に仕事で失敗するのは目に見えている。 そして仕事中に居眠りしてしまう可能性だってある。 ホント、だから睡眠っていうのは大事なのだから。
だが、今日という日は欠勤する訳にはいかなかった。 そう大事な会議があるからだ。
俺はそう思いながらも、結局眠気には勝てず完全にその後の記憶というのは無くなってしまっていた。
ホント、何で人間って起きなくちゃと思う時程、寝てしまうのであろうか。 今まさに俺はそのような状態だったのだから。 さっきまで聖修の事を考え過ぎていて寝れていなかった筈なのに、アラームが鳴ってから眠気というのが急に襲って来て寝てしまうのであろう。 例え今日という日に大事な仕事があってもだ。
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