不確かなこと 3−3

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 智也は突然電話してごめんと謝りを入れてから、まだ仕事中だからと電話を切った。  智也は昔から、いつも日和のこととなると嬉しそうに話をする。  ふと、高2のあの日の会話を思い出す。  日和が作ったチョコレートを食後のデザートに食べようと思うと言って嬉しそうに笑った顔。  日和としては智也の父親にもあげるつもりで少し多めにラッピングしたのに、智也はそれを全部隠してきたと言った。  結局はその一言が日和を苛つかせる原因になって、智也にひどい言葉を浴びせることになった。  智也のためを思って作ったものだったならば、日和も怒鳴っていなかったはず。  ただ、他の誰かのために作った残り物なのに、それと知らずに智也がすごく喜んでくれた。  あたかも自分のための特別だと思わせてしまったことに、日和はすごく罪悪感を感じてしまって、それが苛つきとして表に出てしまったのだ。  あの時の智也の気持ちを知ってしまった今、日和は今更ながら後悔をした。  あの日に戻ってやり直せるなら、もう一度やり直したい、そう思いながら日和はスマホのダイアリーに誕生日の予定を埋めた。
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