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プロローグ(高2の冬)
「は? なに言ってんの? 野々村さんにはもう沢口がいるじゃん。」
「えっ?」
放課後の部活動のため、柔道着に着替えた尾崎進太郎は体育館の裏手で野々村日和を前にして言い放った。
「あっ、ヤベェ、もう行かなきゃ。チョコありがとな。」
部員に自分の居場所を見つかってしまった彼は、慌てた様子で体育館の入り口にある時計を見上げる。
赤とピンクで可愛くラッピングされた包みを片手に持ち上げ、愛嬌のある笑顔を向けて部員たちの方へ走って行った。
包みの中身は昨夜遅くまでかかって作った手作りのチョコレートトリュフ。
尾崎は隣のクラスの同級生。
3年生が9月に引退したと同時に柔道部の副部長になった。
柔道をやっているだけあって体格はがっちりしていて肩幅も広く背も高い。
キリリとした真っ直ぐな眉毛に、ぱっちりとした二重。
一見怖そうにも見えるけれど、誰にでも優しくて、ニカっと笑った顔はとても人懐っこく、男子からも女子からも人気があり、ついでに言えば先生たちからも信頼されている。
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