盆祭り 

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「ふふふ。あのひと、今年も気づかなかった」  出会った時を憶えているのは、私だけ。ルカは、心の中で嘯く。  破れたポイを見つめて、難しい顔をした小さな男の子。黒い甚平を着ていた。  その横にしゃがみ込んだ。めいっぱいのお洒落をして、ちょっぴりおませさんになって。 「どうしたの?」  男の子は、ケースの中で泳ぐ、ひときわ大きな金魚を指差した。珍しい、真っ白な金魚だった。  涙目で、駄々っ子のように少しふてくされた顔。  思わずプッと笑うと、ムッとしかめっ面になるのが可笑しかった。 「だいじょうぶ、まかせて」  年下の子に先輩風を吹かせるのが、いい気分だった。  まだ口に残っている星形は、甘い中に、ちょっぴり香ばしさがある。 「ちょっと焦がしてる」  数秒、眠気に負けてしまったのだろうか。想像した姿の可愛らしさに、また笑みがこぼれる。  本当に、健気で素敵なひと。 「夜なべして、早くこっちに来たりしたら、許さないから」  でも、今夜だけは。    踊りは続く。
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