お届け彼女

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 「琴音、三年の教室に付き合って欲しいんだけど」  一時間目終了後、私は先輩にノートを届けるべく、いざ()かん! と意気込んでいたのだが、他学年の……しかも上級生の教室まで行くということに、急に怖気づく。  「えー……付き合ってるんだから堂々と一人で行きなよ。私、数学の宿題終わらせたいし……」  「数学なんて四時間目じゃーん、お願い!」  私は琴音に向かって両手を合わせる。    「羽那なら大丈夫だって! ほら、早く行かないと時間なくなるよー?」  琴音は数学の問題を解きながら、ノートから顔も上げずにバイバイと私に向かって手を振った。    「え、やだ! そうだね……あと九分しかないじゃん。行ってくる!」  単純な私は、一秒でも長く先輩との時間を確保すべく、先輩のノートを大事に胸に抱えて、一つ上の三年生のフロアーへと階段を駆け上がった。
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