お届け彼女

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 コソコソと、気配を殺して先輩のクラスである三年七組の教室の前までくると、後ろの戸から教室内を覗いた。  先輩は今日もかっこいいんだろうな~……  今、何しているのかな~……  こっそり覗き込んだ教室には、男子が三人いるだけでガランとしており、先輩の姿はなかった。  ――あれれ?  教室内にいた三人の男子生徒は「あちぃー」と、ノートで顔を扇いでいる。運動をした後なのだろう。顔は赤らんでおり、額からは汗を流していた。  一時間目は体育だったのかな?  もう戻ってくるかなー……  廊下を往来する上級生たちと目を合わせないように、先輩の帰りを待つ。  すると、急に背後から「オイ」と声をかけられた。私は「ひゃい!」と、驚きのあまりビクンと肩が上がった。    「うちのクラスに何か用? そこ邪魔ー……って、あれ?」   ……あ、矢野先輩と同じバレー部の成田先輩だ。  何度も差入れに行っていたので、バレー部の皆さんに私の素性はバレている。  私は、ガチガチに体を強張らせて「コンニチハ」と、挨拶をした。  「えーっと、ハナだっけ? ユキトあんたのところにノート受け取りに行くって言ってたけど……」  え? すれ違いだぁ……早く戻らなきゃ……  私が「じゃあ、戻ります」と言って成田先輩に一礼すると、成田先輩は「あ! そのノート……ユキトに届けに来たんだろ? 渡しておいてやるよ」と、手を差し出した。  矢野先輩に直接渡したいけど、次の時間で使うって言っていたし、成田先輩のせっかくの好意を断るのも失礼なので「お願いします」と、私は先輩のノートを渋々、成田先輩に渡した。
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