お届け彼女

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 しょぼーん。  結局、自分の教室に戻っても、先輩には会えなかった。  「羽那、先輩来てたよ。会えた?」  「行き違っちゃった~!」  私は半べそ状態で、琴音に向かって嘆いて見せた。  「羽那のこと、羽那の席座ってバレー部男子と喋りながらしばらく待ってたのに残念だったね……って、あれ?」  「あ!」  私の机の上に、ジャージの上着が丸めて置いてあるのを見つけて声が漏れた。  紺色のジャージ。学年で襟元の内側が色違いになっているそれは、三年生の色である"青"だった。  広げてみると、胸元のネームに白の糸で"矢野"と刺繍があった。  「先輩ってば、ジャージ忘れてる!」  私はムフフと鼻息を荒くして、その大きなジャージを羽織った。  爽やかな清潔感のある石鹸のような香りに包まれる。一緒にいる時に時折感じられる先輩の香りだ。  先輩からバックハグされている妄想をして鼻血が出かかる。  ひゃは~!  次の休み時間に届けに行こう~……  私は、先輩のジャージを膝にのせて、楽しい空想世界で二時間目を乗り切った。    
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