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「矢野先輩! なぜか私の鞄に先輩の生徒手帳入っていたのでお届けに来ましたよぉ」
「先輩! これ、先輩のですか〜?」
「せんぱーい! この単語帳、先輩のですよね~?」
羽那は、よく何かしら俺の私物を教室まで届けに来る。おかげで、クラスの連中にはすっかり顔も名前も覚えられた。
女子からは可愛がられて「ハナちゃん来たー! 今日も可愛い〜」と、声をかけられている。
「矢野の彼女にしておくのもったいないよねー」なんて言うヤツもいる。
ほっとけ!
俺も思ってるわ!
体がデカくてバレーしか取り柄のないような俺に、こんなに慕ってくれる愛くるしい彼女ができるなんて思ってもいなかった。
「何だってそんなにお前の私物、彼女の鞄にまぎれこむんだよ」
羽那が自分の教室へ戻って行った後、同じバレー部の成田が呆れ顔で呟いた。
嬉しそうにニコニコ笑顔でぴょんぴょん弾みながらやってくる羽那が可愛くて、俺は口元がゆるみ、締まりのない顔になっているのが自分でもわかる。
必死に口にキュッと力を込めて平然を装い、「は?」と、何食わぬ顔をした。
「もしかしてだけど、彼女、お前の私物こっそり抜き取ってるんじゃね?」
成田は面白がってそんなことを言い出した。
あぁ、そんな風に思う奴もいるか……
俺は「ちげーだろ」と答える。
「でも、普通にこんなに続くの変じゃね?」と、成田が訝し気に眉を寄せた。
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