たとえこの先、見届けられなくても

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「……あ」  目を開ければそこには母親が居て、直美の体を揺さぶっていた。 「大丈夫?」 「うん」 「本当に? もう一度病院に行った方が……」 「ちょっと疲れただけだから」 「……そう」  約一年前、中学三年生の秋頃だった。  直美は母親によって、病院に連れて行かれている。  理由は覚えておらず、結果も異常なしと出ており。受験勉強のストレスではないかと、医師は見立てていた。  それからは何事もなく高校受験が終わり中学の写真を見返した時に、スマートフォン内のデータが減っており、記憶が抜けている事実に気付いた。  その頃から「何かを届けないといけない」という感情に支配され、落とし物を拾っては力を使用し倒れるようになった。
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