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 結婚するならお金の心配をしたくないし、お金の心配をしなきゃならないのならば結婚なんかしないで独り身がいい。  そう思っていた時期もあったけど、温かい家庭に恵まれなかった私は『家族』という存在に強い憧れを持っている。  家庭を作るにはパートナーが必要なわけで、それにはやっぱり結婚が必須条件。  だからこそ、良い相手に巡り合って結婚をする!  良い相手の基準は人それぞれだけど、私は絶対お金持ちの人がいい。  ついでに言えばイケメンなら尚更嬉しいけど、この際外見は二の次。性格さえ悪く無ければ年齢だって気にしない。  別に専業主婦になりたいわけじゃないし、お小遣い稼ぎ程度に仕事をしても構わない。  とにかく、常に通帳の残高を気にして節約をしなければならないような暮らしだけはしたくないの。 「……はぁ、どこかに居ないかなぁ、お金持ちのイケメン……」  通帳を元の場所に戻した私は再び布団の上に寝転んだ瞬間、ぐぅーっとお腹から音が鳴り響いたけれど、あいにく家には何もない。  食料の買い出しに行かなければならないので我慢していたのだけど、このまま夜も我慢というのは無理がある。 「……買い物、行ってくるかな……」  面倒だけどご飯を食べるには食料の買い出しをするしか無いので、仕方なく身体を起こした私は干してあった白地のロングTシャツと黒のワイドカーゴパンツを手に取って着替え始めた。  それから歯磨きや洗顔、軽く髪を整えていると、隣の部屋から物音が聞こえてくる。 「ん? 隣、空き部屋のはずだよね?」  私の部屋は二階の角部屋で、隣の部屋は空き部屋だった。  それなのに物音が聞こえてくるということは、誰かが越してきたか内見しに来たということ。 「……空き部屋で気楽だったのになぁ」  どんな人が来ているのか、好奇心が勝った私は早々に支度を終えて、買い物へ出掛ける為に外へ出た。  すると、 「あ、お隣の方ですか? 俺、今日からここに越してきた三嶋(みしま) 睦月(むつき)です」  引っ越して来たという隣人、三嶋さんが笑顔で挨拶をしてくれた。
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