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「実はこれからコンビニで食料買い込もうと思っていたところだったんで、助かります」 「そうなんですね。えっと、それじゃあ、お裾分けする分取り分けたら、こちらから伺いますね」 「ありがとうございます。俺はとりあえず、飲み物とかも無いのでコンビニ行ってきます」 「分かりました。それじゃあえっと……三十分後くらいに伺いますね」 「はい、よろしくお願いします」  こうして私たちは一旦別れ、私はさっき作って冷ましている料理を三嶋さん用と自分用に取り分ける。  そして、 「……そう言えば、今日はカレーにしようと思ってこれも多めに作ったんだよね……どうせなら、一緒に食べるのもアリかな? いや、でも……見知らぬ人を家に上げるのはちょっとなぁ……」  カレーもお裾分けしたいけど、自分も食事はまだだから、いっそ一緒に食べるのもいいかと思ってみたものの、いくら人の良さそうな隣人さんでも初対面だし、男の人だし、流石にいきなり部屋に上げるのは気が引ける。 「小さいお鍋に移して、温めて食べてもらうか」  結局彼用に別の鍋に移し替え、他の諸々のおかずをそれぞれ保存容器に詰めた私は時間になったので三嶋さんの部屋を訪ねた。 「これ、どうぞ。あの、容器とかはそのまま返してくれて大丈夫ですよ。袋に入れてドアノブに掛けて置いてくれてもいいので」 「いやいや、流石にそんなわけには。きちんと洗って返しますから」 「でも、お裾分けはこちらから言い出したことですから、本当、気にしないでくださいね」  料理を手渡した私は容器の返却について話してそのまま部屋へ戻ろうとしたのだけど、 「あの、西根さんはもう食事は終わってるんですか?」  そう問い掛けられ、「いえ、まだ。これから食べるところです」なんて反射的にそう答えてしまって若干失敗したなと思っていると、 「あの、もし良かったら……一緒に食べませんか?」  案の定、そんな提案をされてしまった。  ただ、それにはどちらかの部屋で二人きりという状況になるわけで、流石にちょっとなぁと戸惑っていると、「ニャァ〜」という猫の鳴き声が聞こえて来た事で、私は玄関奥の部屋に視線を向けると、そこには白い子猫が一匹、三嶋さんを求めてゆっくりこちらへ向かって来る姿があった。
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