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8月某日、花火大会再び
2回目の花火大会だから、待ち合わせ場所で顔を合わせた翔とちはやは、少しぎこちなかった。
「本当に生き返ったんだな、俺たち」
「うん…」
それ以上、ふたりは何も言えずにいたが、翔は思い切ってちはやの手を取った。
「手を、つなぎたかった、一度でもいいから」
顔が上気してるのは、暑さからだけではない。やや引っ張り気味に翔はちはやを先導した。
高校から見える花火は、やはり綺麗だった。人混みの喧騒から離れて、花火と自分たちだけの空間が浮かび上がる。あの時と同じように隣に並んで見上げた。
「私、翔に言っておかなきゃいけないことあって」
あの時、言えなかったことを、口を開いたのはちはやが先だった。
「お父さんの仕事の都合でベルギー行くんだ」
「うん、知ってる」
「えっ」
「俺の母さんから聞いてて、知ってた」
花火が鳴り響いて、また次の花火がぱあっと広がる。翔はちはやの前に出て、正面から見つめた。
「だから、好きだって、ちゃんと伝えたかったし、今もそれは変わらない」
「3年は帰ってこれないよ、私…」
「あの時、ごめんってちはやが言ったのが、それが理由だったんなら、俺は構わない、ずっと待っていたいんだ、俺が」
初めて、ちはやの頬に朱が差した。
「私…そういうのよくわかんなくて…、修学旅行の夜に吉岡くんに告白された時も断ったんだけど…」
さらりと爆弾発言が出て、翔は目眩がする。吉岡の奴、と口から出そうになるのを抑えた。
「あのね、翔に好きだって言われた時と、感じ方が全然違うっていうのはわかったんだ」
「――待って」
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