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天使と悪魔、見習い
天使や悪魔になるには試験がある。長い年月をかけて生成された思念体は形を持ち、霊的な存在として意思を持つようになる。ほぼ同じ頃に生まれたふたつの魂はマノスとエフィと名乗り、前者は悪魔を、後者は天使を目指すことにした。それになるためには試練を越えねばならないのだが、早々にクリアしたマノスは、一向に及第点をもらえないというエフィの前に余裕の表情で現れた。
「おまえさあ、先輩方から評判悪いぞ?」
エフィをからかうつもりではあったものの、半分以上は事実であった。
「いいかげん、やり方変えろよ、そんなだからいつまでたってもクリアできないんだぜ?」
「んんー…」
人間界を見下ろせる塔の縁に腰掛けていたエフィは気のない返事をした。
「天使は人間の願いを地道に何人か叶えたらなれるんだろ?」
「やってるよ、ちゃんと」
「おまえ、死ぬ直前の人間の前に現れては最期の願いを叶えるとかで時間を戻してやり直しさせてるらしいじゃん」
「それが私の売りだからね」
「死神系悪魔の先輩が営業妨害だって怒ってたぞ」
「いやー、でもそれが私の」
「うまくいってないのにウリも何もあるかっての」
時間を巻き戻すのは高難易度だし、死の間際に人間から放たれる願いを瞬時に察知して駆けつけるのも、並の業ではない。ただ、それ以外はぽんこつだった。
「ステータスの振り方、間違えてるな」
「ああー! このままだと雲散霧消の未来が!」
そう、試験に落第すると消滅するのだ。また何千年となく空間を漂う何物でもない存在になる。
「俺が知ってるだけでも悪行がふたつあるな」
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