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唯菜、花火大会
修学旅行2日目、私達を乗せた観光バスが高速道路を走ってるときに、大きな衝撃と雷が落ちたみたいな音と感じたことのない痛みに襲われた。たぶん、ダンプカーみたいな大きいトラックが降ってきたんだと思う。急なことで全然わからない。
何故か天使を名乗る真っ白な人が出てきて、まぶしい光に包まれたかと思うと、突然あの日に戻ってきていた。そう、花火大会の日。たしかに、もう一度やり直したかったな、って思ったけど。
スマホで日にちを見て、鏡に映る自分を見て、本当に戻ってきたんだと実感する。
もしかしたら、これは夢かもしれないんだけど。
お母さんに着付けてもらった浴衣を急いで脱ぐ。だって、浴衣だとふたりを追えなかった。偶然見かけて、こっそり後を追ったのに、あの学校の敷地に忍び込む翔とちはやを見送ることしかできなかった。隔てられてしまった私の部屋のように。
翔は花火大会には行かないって私に言ってたのは、ちはやを誘うつもりだったからだ。除け者にされてつらいとか悲しいとか惨めとか、あの時追えなかった自分を心底悔やんだ。
代わりに誘ってくれてた遥と美樹にLINEを送る。
「ごめん、急に行けなくなった」
えー、どしたん?って心配されたけど、お母さんと進路のことで喧嘩して外出禁止って言われた、って咄嗟に嘘をついてしまった。後ろめたい。でも、せっかくやり直せるチャンスが巡ってきたんだから、なりふりかまってられない。
もう、後悔したくない。
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