0人が本棚に入れています
本棚に追加
「青空公園」
「へ?」
「青空公園向かって」
兄がハンドルを切り、この近くだと割と大きめの公園に向かう。
「あいつ、青空公園って言ってた?俺、よく聞こえなかったけど」
「言ってないよ。公園としか」
トシはスマホの画面を操作しながら言う。
「え?じゃあなんでわかんだよ。公園なんていくらでもあるだろ」
「言ってはいないけど、トークでメッセージ来てる」
兄は頭をかく。
「ごめん。言っている意味まったくわからんのだが」
「とにかく向かって。着いてから、余力あれば説明する」
青空公園に着くと、もうあたりは真っ暗で、街灯が明かりを灯していた。
「けっこう広いけど、どのへんだ」
車から降りると、兄は無造作に足を進めようとする。
「こっち」
「へ?」
「はやく」
トシが言うと、兄は腑に落ちないような顔でトシのあとをついてくる。
「なぁ」
うしろから兄が話しかける。
「なに」
「こっちってなんでわかんの」
「あぁ、あいつのスマホにGPSつけてるから」
兄は「ふーん」と言ったきり、黙ってついてくる。
たまにすごく心配になる。
単純で優しいところは兄のいいところではあるが、普通は友達のスマホにGPSなんてつけてたら引くんじゃないのか。
なにも疑わず、トシを信じ切っている兄だからこそ、今ついてきてもらっているのだが。
しばらく歩くと、兄が突然「あっ」と声をあげる。
トシは振り向き、「え、なに」と眉をひそめる。
まさか、バレた?
「いや、スマホ車に忘れてきちゃった」
最初のコメントを投稿しよう!