0人が本棚に入れています
本棚に追加
トシはため息をつく。
「ショウ待ってるから、とりあえず向かおう」
「いや、でもさ」
兄は珍しく、きょろきょろしながら落ち着かない様子を見せる。
「え、そんなにスマホ重要視する人だっけ?」
「重要だろ。いまの時代、スマホがなければ買い物も出来ないもん」
「いま買い物にいくわけじゃないんだけど」
そんな言い合いをしているうちに、ガサっと草むらから音が聞こえた。
まだ早いって。
トシは心の中で突っ込みながらも聞こえないふりをした。
「いいから早くいこ」
カサカサ……
「なんか音しない?」
兄があたりを見渡す。
「風じゃない?」
カサカサ……
「違うよ。なんかいるって」
「いないって」
トシが足を進めようとしたそのとき。
「バーーーーーーーーーーーん!!」
勢いよく、なにかが飛び出してきた。
いや、なにかはなんとなくわかっていたが。
予定と違いすぎて、目を見開く。
「ちょ……ばか!いまじゃないって」
こそっとトシが言うと、ショウは「え?ううん。いまだよ。絶対」と自慢げに言う。
トシが深い溜め息をつき、後ろにいる兄のほうを振り向く。
「……は?」
そこにはなぜか、ケーキを持った兄がいた。
「誕生日おめでとう!!!!」
兄が言う。
トシは「まじか……」とつぶやく。
最初のコメントを投稿しよう!