サプライズ

5/6
前へ
/6ページ
次へ
「ありがとう」  そう言い、兄がろうそくの火を吹き消す。 「あー、俺もろうそく用意しておけばよかったな。 ていうか、ショウさ、トシのサプライズでろうそく用意してるなら、俺のサプライズでもろうそく用意しといてよ」 「でも、兄ちゃんのサプライズ計画では、ろうそくの火をつける時間ないから、なしでいこうって言ってたじゃん」 「ショウ、俺達ふたりからサプライズの計画持ち寄られたの?」  トシが聞くと、ショウが嬉しそうにうなづく。 「びっくりしたよ。ふたりともほぼ同じ計画なんだから」 「どっちか断ればよかったじゃん」 「だって両方協力したかったし、二人の笑顔みれるならやりたいし、二人が俺に頼ってくれるの嬉しかったし」  ショウが恥ずかしそうに言う。  兄とトシは目を合わせ、気まずそうに笑う。 「なんか最初変だと思ったんだよなぁ」    兄が照れ隠しからか、ケーキに視線を移す。  「最初?」 「ショウからトシに電話かかってきたとき。え?計画と違うじゃんって。しかもなんか昔のさ、合図みたいの使いやがって」 「まじでやばいときは、嘘を言うっていうやつね」  数年前まで喧嘩ばかりだったときに決めた合図。  別の中学だった、という嘘は、公園で大人数に囲まれているという合図。  彼女が出来た、という嘘は、追われているという合図。 「本当に彼女が出来てたら、どうするんだって話だよね」 「本当に出来たら、お前は電話で済ませないだろ」  トシはショウの頭を小突く。 「でも、すげぇなお前」 「なにが?」 「だって、どっちにもバレないように、どっちのサプライズにも対応できるようにいろいろ考えたんだろ?」 「確かに、すごいわ」  兄とトシに褒められ、「ふん」とショウはよくわからない返事をした。 「二人とも同じ誕生日だから」  ショウが小さい声でボソッと言った。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加