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「ありがとう」
そう言い、兄がろうそくの火を吹き消す。
「あー、俺もろうそく用意しておけばよかったな。
ていうか、ショウさ、トシのサプライズでろうそく用意してるなら、俺のサプライズでもろうそく用意しといてよ」
「でも、兄ちゃんのサプライズ計画では、ろうそくの火をつける時間ないから、なしでいこうって言ってたじゃん」
「ショウ、俺達ふたりからサプライズの計画持ち寄られたの?」
トシが聞くと、ショウが嬉しそうにうなづく。
「びっくりしたよ。ふたりともほぼ同じ計画なんだから」
「どっちか断ればよかったじゃん」
「だって両方協力したかったし、二人の笑顔みれるならやりたいし、二人が俺に頼ってくれるの嬉しかったし」
ショウが恥ずかしそうに言う。
兄とトシは目を合わせ、気まずそうに笑う。
「なんか最初変だと思ったんだよなぁ」
兄が照れ隠しからか、ケーキに視線を移す。
「最初?」
「ショウからトシに電話かかってきたとき。え?計画と違うじゃんって。しかもなんか昔のさ、合図みたいの使いやがって」
「まじでやばいときは、嘘を言うっていうやつね」
数年前まで喧嘩ばかりだったときに決めた合図。
別の中学だった、という嘘は、公園で大人数に囲まれているという合図。
彼女が出来た、という嘘は、追われているという合図。
「本当に彼女が出来てたら、どうするんだって話だよね」
「本当に出来たら、お前は電話で済ませないだろ」
トシはショウの頭を小突く。
「でも、すげぇなお前」
「なにが?」
「だって、どっちにもバレないように、どっちのサプライズにも対応できるようにいろいろ考えたんだろ?」
「確かに、すごいわ」
兄とトシに褒められ、「ふん」とショウはよくわからない返事をした。
「二人とも同じ誕生日だから」
ショウが小さい声でボソッと言った。
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