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3人は、なんとなくもう暗くなっている空を見上げた。
二人と出会ってからどれくらい経つだろうか。
今日は、兄とトシの誕生日。
けれど、二人は本当の誕生日を知らない。
だから、今日は、園長が決めた二人の誕生日。
たまたま捨てられた日が同じだった。
兄が捨てられた8月11日。その3年後の8月11日にトシは捨てられた。
血なんてつながっていない。
それでも、兄はショウとトシにとって、”兄”だった。
「やっぱ兄弟って考えていること似ちゃうんだなぁ」
兄が二人の頭を撫でる。
「なんだよ」
「気持ち悪いな」
そう言いながらも二人は笑う。
昔を懐かしく思えるのは、少し大人になれたということだろうか。
言葉がいつも足りなくて、いつも誰かに勘違いされて、なにを考えているかを伝えるのが苦手だった。
けれど、警察に補導されるたび迎えにきた園長から教えてもらった。
『下手くそでも、不器用でも、なんでもいい。
本当に大事な人には、ちゃんと自分の言葉で、自分の気持ちを、
しっかり伝えようとしないと、大事に思っていることすら届かないんだぞ』
ちゃんと果たせるかな。
園長が遺してくれた言葉。
「来年も再来年も、俺が二人のサプライズ計画協力するからさ」
ショウが言う。
「計画かぶってたら言ってよ」
「それじゃ、サプライズじゃない」
「それもそうだな」
風が、気持ちよく吹いた。
「とりあえずケーキ食べるか」
”今日”がくるたび、きっと、思い出す。
だって、”誕生日”って特別なんだから。
まだずっと先になるけど、待っててよ。
次会うときまでに、ちゃんと「ありがとう」って、言葉で届けられるくらい大人になるから。
そこから、見てて。
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