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いつまでも鳴き続けるセミの声。
夏の象徴が余計に暑さを感じさせ、なにもしたくなくなる。
夏なんて、はやく終わればいい。
なんとなく眺めていた動画中に、電話がきた。
流し見をしていた動画を止め、電話に出る。
「はいよ」
「あ、あのさ……実はさお前と俺、違う中学だったんだよ」
「……は?」
いつもの飲みの誘いの電話だと思って出た親友からの電話は、突拍子もない言葉から始まった。
トシは、漫画を置き起き上がり、ベッドの下に寝ていた兄の肩を叩く。
「うぅ、まだ寝る……」
兄が寝ぼけている間に、上着を着て、スピーカーにした。
「なに?中学?どういうこと?」
トシが言うと、ショウがたんを切ったように話し始める。
「いや、あの、なんかさ、同中だったやつとさ、たまたま会って、『最近はトシとしか会ってないから、同窓会とかしたいよな』なんて話してたらさ」
「うん」
トシは、兄に車の鍵を渡し一緒に部屋を出る。
「そしたらさ、そいつが『トシってだれ?』とか言い出しだわけ。だから、あぁそういえばトシとは中学別だったなぁなんて思い出してさ。ほら、俺バカだし、トシもバカだろ?だから、今まで中学からのダチだって勝手に変換されてたみたいだわ。俺達、知り合ったの最近だったよな?えっと、バイト先が一緒でさ」
兄はなにも言わず、運転席に座り、トシは後ろに座る。
「そうだったっけ?」
トシはそのまま画面をトーク画面に切り替える。
「そうだよ。だからさ、」
「で?いま、お前どこにいるんだよ」
トシがそう言うと、ショウは言葉を詰まらせる。
「……だからさ、そんなに関係性深くないっていうかさ、まだよくわからないこととか多いんだよなぁ俺達」
ショウは、トシの質問に答えず続ける。
「もう外出てんだけど。話はあとで聞くよ。どこ?」
「……公園」
「どこの?」
プツっ……
そこで電話が切れた。
「……どうする?どこ向かう?」
なんとなく事を察したらしい兄が、車を走らせながら言う。
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